今年は全国的にインフルエンザが猛威を振るっていて、日本国内のあちこちで警報基準を超えている状況です。
東京都内でのインフルエンザの定点あたりの患者数が警報基準を超えるのは、5年前の2019年1月以来だそう。
インフルエンザは大人も子どももかかる病気ですが、高熱を伴うインフルエンザで注意したいのは子どもの熱性けいれん。
熱性けいれんが起きたときの対応方法や救急車を呼ぶ目安など、いざというときに慌てないように熱性けいれんについて学びましょう。
熱性けいれんとは?
子どものけいれん性疾患で最も頻度が高い疾患で「通常生後3か月から満5歳までの乳幼児期に起こる発熱に伴う発作で、頭蓋内感染症や明らかな発作の原因がみられず、無熱性の発作の既往がないもの」と定義されています。
つまり、①発熱があって、②けいれんを起こすような病気(たとえば髄膜炎や下痢、代謝異常など)ではなく、③てんかんの既往がない けいれんを、熱性けいれんといいます。
熱性けいれんは38℃以上の発熱に伴って起こりますが、その発熱の原因としてインフルエンザや突発性発疹、夏風邪(ヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜熱)などがあります。
高熱が出る疾患ではその種類に関わらずけいれんが起こる可能性があります。
熱性けいれんの持続時間はほとんどの場合は2〜3分程度ですが、ときに30分以上続くこともあります。
しかし適切な対応をすれば熱性けいれんそのものは死んでしまうような疾患ではないので、安心してください。
遺伝的な要因もある
日本では子どもの3〜8%が熱性けいれんを経験するといわれ、欧米に比べて発症頻度が高いのが特徴です。
熱性けいれんの子どもの父親の約40%、母親の25%が小児期に熱性けいれんの経験があります。
女児より男児のほうがやや熱性けいれんを起こしやすいです。
パパやママ、きょうだいや身近な親戚に熱性けいれんを起こしたことがある人がいる場合はより注意しておきたいですね。
熱性けいれんを起こしたことのある子どものうち、約2/3は再びけいれんを起こすことはないといわれています。
繰り返す約1/3の子どもも年齢を重ねるにつれて発症頻度は減っていき、6歳頃にはほとんどなくなります。
「てんかん」に移行するの?
熱性けいれんの多くは一過性のもので、ほとんどの子どもで後遺症は残しません。
ですが熱性けいれんを経験した子どものうち、3〜5%がてんかんに移行するといわれています。
熱性けいれんを経験した子どもがてんかんを発症しやすくなる理由はハッキリとはわかっていません。
5歳を超える年長児がけいれんを繰り返したり、発熱がないのにけいれんを起こしたときはてんかんを疑って小児科を受診しましょう。
熱性けいれんの症状は?
熱性けいれんにはこんな症状があります。
① 意識がなくなり白目をむく、目の焦点が合わない
② 手足を突っ張らせガクガク震わせる
③ 身体がそり返ってビクビクする
④ 歯を食いしばって息を止めて顔色が悪くなる、唇が紫になる
⑤ 名前を呼んでも反応がない
⑥ 目やまぶたがピクピクする
⑦ 嘔吐する
動きが激しく初めて見ると衝撃的ですが、多くの場合は5分以内におさまります。
けいれんが止まった後もしばらくボーっとしていたり、眠ってしまうことも多いですが、目が合ったりおしゃべりできたりすれば意識は戻っています。
単純型熱性けいれん
熱性けいれんのなかでも
① 発作時間が15分以内で意識の回復がよい
② 24時間以内に再びけいれんしない、
③ 左右対称の全身性のけいれん
上記の特徴があるものを「単純型熱性けいれん」と呼びます。
典型的なけいれんと判断できるため詳しい検査を必要とすることが少ないのが特徴です。
複雑型熱性けいれん
一方で
① 発作時間が15分以上続く
② 24時間以内に何度もけいれんを繰り返す
③ けいれんが身体の片側や一部のみに起こっている
上記の特徴があるものを「複雑型熱性けいれん」と呼びます。
複雑型熱性けいれんや、30分以上けいれんが長く続く「けいれん重積」の場合は他の疾患との鑑別が必要なため入院して詳しい検査をします。
病院に行く必要は?
過去に熱性けいれんを起こして医療機関を受診して熱性けいれんと診断されている場合、次の項目を満たしていれば当日中か夜間であれば翌朝に受診すればほとんど問題がありません。
① けいれんが5分以内におさまり繰り返していない
② 元気な様子に戻った
③ 目が合ったりおしゃべりできる
救急車を呼んでもいいの?
こんな場合には救急車を呼びましょう。
① 初めての熱性けいれん
② 5分以上けいれんが続いている
③ 何度もけいれんを繰り返している
④ 生後6か月未満または6歳以上
⑤ 呼びかけても反応が薄い、意識が戻らない
⑥ けいれんが身体の片側や一部のみに起こっている
⑦ 目が合わない
⑧ 唇の色が悪い
⑨ 呼吸が浅い・不規則
救急車では酸素投与をしてもらえるため呼吸状態の悪化を防ぎ、子どもの苦しさを取り除いてあげることができます。
医療機関に到着してからもスムーズに処置を受けることもできるでしょう。
目の前で我が子がけいれんしている姿を目の当たりにすると5分間も待つなんてとても不安で長く感じてしまいますが、落ち着いて次で紹介する対応をできるようにしましょう。
けいれん?! どう対応したらいい?
熱性けいれんは熱の上がり始めに起こることが多く、けいれんをきっかけに発熱に気がつくこともあります。
子どもがいつけいれんするか予想ができないので、落ち着いているときに頭の中で何度もシュミレーションしておきましょう。
まずはパパ、ママが落ち着いて!
子どもが急にけいれんすると、パパもママもとても驚いてしまいます。
でもまずは落ち着いて。
ドキドキしてしまいますが深呼吸をして対応しましょう。
けいれんが始まった時間を確認する
通常であれば数分でけいれんは止まりますが、5分以上続く場合は救急車を呼ばなくてはなりません。
けいれんの持続時間を測りましょう。
手元にスマホがあるならストップウォッチを起動させると分かりやすいです。
子どもを安全な場所に
手足をぶつけたり、頭を打たないよう危険なものがない平らな場所へ寝かせます。
嘔吐したものや唾液で窒息しないよう身体ごと横向きに寝かせるのがポイント。
苦しくないように洋服の首元や胸元をゆるめてあげましょう。
けいれんの様子を観察する
手足や目の動き、左右対称かなどを観察します。
難しい場合はスマホの動画撮影でOK!
けいれんの持続時間も測れるし、後に受診したときにお医者さんに見せることで診断がスムーズにできます。
熱性けいれんのときにやってはいけないこと
動きの激しい熱性けいれんなので、間違った対応をすると事故や怪我の原因にもなります。
危ないのでやめましょう。
口の中にものを入れる
舌を噛まないようにと口の中にものを入れるのは危険で、口の中を傷つけたり、飲み込んでしまうリスクがあります。
歯を食いしばっていても無理やりこじ開けてはいけません。
熱性けいれんによって舌を強く噛むことはありません。
身体を揺する、押さえつける
激しい動きを止めようと強く抱きしめたり、手足を押さえつけるのもNGです。
けいれんは押さえつけても止まるものではないのです。
人工呼吸をする
顔色が悪いからといきなり人工呼吸をするのもやめましょう。
嘔吐したものが気道に入ってしまい窒息のおそれがあります。
熱性けいれんの予防はあるの?
残念ながら熱性けいれんを完全に予防する方法はありません。
しかし高熱がきっかけになるため、たとえばインフルエンザの予防接種を受けるなど一般的な風邪予防をしましょう。
熱があるときは首周りや脇の下などをアイスノンで冷やしてあげるのもよいでしょう。
熱性けいれんを繰り返す子どもには、発熱時に使うけいれん予防のお薬が処方されることもあります。
お医者さんや薬剤師さんの説明をよく聞き、適切に使用してあげることでけいれんの予防に効果が期待できます。
まとめ
頭では大丈夫だと分かっていても、いざ目の前で我が子がけいれんしているととても不安になってしまうでしょう。
近くに家族がいる場合はすぐに声をかけて複数人で対応しましょう。
もし屋外など出先でけいれんしてしまった場合も近くの人に助けを求めることができたらベストですね。
救急車を呼ぶ目安もまとめましたが、おちゃ先生個人としては、けいれんしたら迷わず救急車を呼んでいいと思っています。
だって、熱性けいれんなのか、他の病気によるけいれんなのかって見ただけでは分からないですし、けいれんが止まっているように見えても実は脳がまだ興奮状態ってこともありえますから。
病院に着いて「なーんだ、心配しすぎだったね。」くらいで丁度いいと思います。
子どものことを1番に考えているのはパパ、ママですもの!
冬はさまざまな感染症が流行して、熱を出してしまうことも多い季節です。
日頃からマスクを着用したり、手洗い・うがいで体調管理をしていきましょう!
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